相続とは?家族間でもいつかは話題になる話。そもそも相続とはなんでしょう。

遺産相続は、故人が残した財産を引き継いでいくための制度です。

誰しもが関わっていく可能性があるものですが、「死」を意識せざるを得ないものだけに話題としては敬遠されがちであることも現実です。

ここではいざという時に困らないように、相続の基本知識について確認していきましょう。

目次

相続には二通りの方法がある

 相続の話の中では、亡くなった方のことを「被相続人」といい、
財産を引き継ぐ権利がある人のことを「相続人」といいます。

被相続人に有効な遺言書がある場合には「遺言相続」として原則その指定に従って財産を分けます。遺言書がない場合は、相続人のうちでどういう割合で引き継ぐかを民法の規定に従って決める「法定相続」の方法となります。

遺言相続

 指定相続とも言われる方法で、文字通り誰にどの財産をどのように相続させるか、被相続人の指定に決定を委ねるものです。つまり、被相続人の遺言によれば思い通りの相続が可能となるのです。遺言書がない場合の「法定相続」に優先して適用されます。
 かつては「家督相続」という制度がありました。親から嫡子(一般的に長男)に全ての財産を受け継がせるものです。伝統的な「家」という制度を守るために必要だとされた法定の相続方法です。日本国憲法下の現在では廃止されましたが、「家」に重きを置く慣習が存在することも無視できません。また、様々な思いから自由な財産承継を望むならば、百人百様の相続があるわけで、故人の最終意思を尊重する上で遺言による相続の指定は、自由意思による自己実現を可能にするものでもあります。
 ただし、自由意思による指定は時に相続人間の不公平を招くこともあります。そのため、一定の相続人に遺留分を認めたり、相続人間の協議で遺言と異なる分割をすることも可能となる制度を用意しています。

法定相続

 遺言による相続は法定相続に優先するのが相続の大原則です。しかし、実際にはわが国では遺言による相続が浸透しているとはいえません。圧倒的多数が「法定相続」であることが現実です。
 民法には、誰が相続人になるかについて、誰がいくら相続するのかという相続分についても条文にして規定しています。夫や妻は2分の1、子どもたちは2分の1をそれぞれで、故人のきょうだいも相続人らしい、などを知識としてお持ちかもしれません。まさしく「法定相続」の規定です。法定相続が開始した場合は、決められた相続人がそれぞれの割合で遺産を共有財産として保有しているものとされます。そして、その法定された相続人が遺産を分割する上で協議を行い、分割内容を決定しなければならないこととされています。
 原則としては、各相続人の法定相続割合に応じて、共有財産のどれをどのように分割するかを決定する場が遺産分割協議であるとされていますが、実際には分配割合も協議の上で合意があれば持分を放棄をしたり加重することも認められています。

遺産分割協議

 法定相続が開始すると、相続人間で遺産が共有されることになります。これは遺言書による指定がなされていない限り全ての遺産に適用される原則で、自分以外の相続人が否定することはできません。被相続人と同居していたとしても、別世帯で生計を立てていたとしてもこの原則は変わりません。相続がこじれる話としてよく言われるのが「故人と同居していた跡取りから、嫁いで出て行ったのだから相続人でもなければ渡す財産もないといわれた」「故人の面倒も自分が全部やったし、母親の面倒もこれから自分が見ることになる。それをしない人に遺産分割なんか必要ない。」というもの。前者は嫁いで別の家に家系に入ったとしても相続人として法定されているのだから当然に共有者であることになります。後者は故人の死亡事実で遺産が共有化していることは明白。更には母親の面倒を見ることと遺産分割の手続きを進めることとは関係がありません。いずれも遺産を渡したくない口実としては常套手段であるわけですが、遺産の共有化を誤って認識している代表例ともいえるでしょう。
 法定相続が相続財産の共有化から始まるということは、2人以上の相続人がいる場合、モノや権利を利用したり処分する際にどう分けるかという問題が発生します。そこで「遺産分割協議」が必要になるわけです。ちなみに、相続人が一人であれば協議は必要ありません。
 遺産分割協議は相続人全員で話し合いをして分割内容をまとめ、全員が合意することで成立します。話し合いとはいっても、なにも顔を突き合わせる必要はなく、電話や手紙、メールなどで合意のやり取りをすることでも構いません。
 ただ、その後のトラブルを避けるためであったり、対外的に合意内容を示すためにも「遺産分割協議書」という書面を作成することが必要になります。これには全員が実印で押印し、印鑑証明書を添付します。

調停・審判

 話し合いがまとまらない場合は、法定相続分(2分の1や4分の1などの法定の割合)にしたがうか、家庭裁判所に「遺産分割の調停」「遺産分割の審判」を申し立てて解決を図っていきます。

まとめ

 相続は、財産の受け継ぎを公平にスムーズに行うことで、財産の有効活用や生活基盤の安定を図る意味から、故人にとっても受け継ぐ方にとっても自己実現のための重要なシステムです。制度を知らないがために一部の不埒な人の横暴を許すことになっては、故人も浮かばれませんし、自身が当然に受けられる権利を言われるがままに放棄することは、自身の夢の実現をあきらめることになるかもしれませんし、経済的困窮を招く原因にもなりかねません。
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