これまでどのような人が相続人となれるのか、それをどのように確定していくのか、法定相続の決まりに則してみてきました。ここでは、法定相続における各相続人のそれぞれの取り分の決め方や公平な分配に向けての決まりについて

久留米で相続専門の行政書士事務所ひろざわ事務所が解説していきます。

目次

家や土地、預金などの財産はどうわける?

誰が相続人になるのか、何も決めることなく民法という法律がその権利者を決定していることは既に前のコラムで確認しました。
配偶者や血族(子、親、きょうだい)がそれにあたります。人が亡くなった瞬間から、
その方の財産は既に「決まった相続人」の元に共有状態で所属することになります。あくまで頭の中での話ですが・・・。
もし各財産ごとに自動的に名札が付くとしたら、死亡宣告があったと同時に遺された相続人の共同の名前に変わってしまうイメージでしょうか。

登記簿の内容は浮世離れ?

ここで疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。
「名札なら登記簿がそれを表しているんじゃないか?」
「登記を変えたつもりはないけど、固定資産税は自分が払ってるので私が所有者でしょ?」
というものです。

そうです。
例えば不動産であれば、それが誰に所属しているのかを第三者にもわかるように記録させるものが不動産登記の制度です。
他に同様な制度は、自動車の検査登録制度がありますね。
これらは確かに所有者の名前が書いてあって、無権利者が勝手な取引をしないような足かせになっています。
でも、これらの制度は自動的に名前が変更される制度ではありません。
現在の制度では、権利を持つ人が登記所に申請して名義を変更することが原則です。
だから、「ずっと前に亡くなったおじいさんの名義のまま・・・」という浮世離れした内容が普通に存在しているのです。

固定資産税の話は、
その「名札」が当てにならないことを役所が知っている上で独自に調査しているのです。
現実の所有者と登記簿上の所有者のずれがあると、土地や建物を売ろうというときに、
「まずは本当の所有者を決めてください」ということになって話が先に進まないのです。
所有者不明の土地や空き家の問題が深刻化している理由もここにあるのです。

相続の法定割合

法定相続ではそれぞれの取り分(法定割合)も決められています。

第一順位の相続(配偶者と子)の場合は配偶者と子でそれぞれ2分の1、
第二順位の相続(配偶者と親)の場合は親が3分の1で残りが配偶者、
第三順位の相続(配偶者と兄弟姉妹)の場合は兄弟姉妹が4分の1で残りが配偶者となります。
配偶者がそれぞれの場面で優遇されるのはともに財産を築く、
あるいは管理していく上で夫婦共同でなされたものであるとするためです。

かつて戦前の相続は家を継ぐ者に全ての財産を集中させる家父長制がとられ、それによる相続を家督相続と呼んでいました。
「家」の継続を重視し、財産の散逸を避ける仕組みですが、ここには個人の貢献はあまり重視されません。
かつての妻達の働きも多大なものであったはずですが、その働きが財産として反映されることはなかったのです。

法定相続の例外

このように、夫婦関係、血縁関係で相続の権利が認められているのですが、
これに異を唱えることができる制度がいくつかあります。
一つは自由な協議による遺産分割、2つ目は遺言、3つ目が相続欠格、相続排除の制度です。

自由な遺産分割

遺言

遺言とは、故人最後の意思表示として最大限配慮される法律行為です。
法律に反する契約でなければ(例えば、人を殺せ。人を殴れ。~から盗めなど)原則として有効な意思表示になります。
相続人に気に入らない人がいれば、その人にはあげない遺言も可能ですし、
逆に遺贈といって、相続人ではないけれどどうしても分けてあげたい人がいる場合も活用可能です。
(ただし、一定の相続人には「遺留分」という最低限守られる請求権があります)

相続欠格、相続廃除

相続欠格、相続排除の制度は、被相続人や他の相続人に対して反社会的行為を行ってしまった相続人の資格を否定し、
または被相続人に対する侮辱行為などにより相続人から廃除してしまうもの。
その人は相続人になれません(その子孫は代襲できる)。

まとめ

遺産分割協議を円満に進めるにおいて重要でありつつ難しいのが「公平性」の部分です。
それぞれの相続人にそれぞれの事情があり、少しでも有利に協議を進めたいという心理が働くことは、
人情として理解できるものでもあります。
しかし、優位に協議を進めたいとの気持ちが強く出てしまうと、
他の関係人の心情を害してしまい、まとまる話もまとまらないといったことは相続に限らずありうる話です。

遺産分割の性格としては、諸説ありますが私は各相続人がそれぞれに公平に受け継がれるべきものであろうと考えている立場です。
法定相続の割合を基本に据え、その上で各相続人の事情を検討して増減していくことが相続法の立法趣旨にかなうものであり、
協議方針としても最善だとの立場を取っております。
従って、私が業務として関与する協議の場では依頼人への肩入れはせず、各相続人の相談相手、協議の立会人というスタンスで務めさせていただいています。

円満な相続を望まれる上では、ぜひとも久留米の相続に強い行政書士ひろざわ事務所をご検討下さい。